ウガンダ、マケレレ大学留学と学生生活体験記

(2009/5)

講師紹介:
【アフリカ講座】品川夏乃
早稲田大学4年生
2008年ウガンダのマケレレ大学留学

学生のうちにアフリカに行くことは、私の将来設計の中に昔からしっかり組み入れられていました。国際協力や異文化交流に対する興味の強かった私にとっては、ごく自然なことで、ただの旅行やボランティアではなく、留学できたら最高だろうと考えていました。当時一年間のオーストラリア高校留学を終えたばかりだった私は、授業を通して、オーストラリア人が自分の国に対してどのような視点を抱いているのかを学びました。

国連もNGOも莫大な資金をアフリカのために当てているのに、変化がないどころかアフリカの状況は悪化していると言われ続けているのはなぜなのだろう。それは国連や大手NGOが、欧米からの視点でアフリカを捉えているからかもしれない。では私自身どうすればよいのだろうと考えた時、現地の教育機関にしばらく所属して、もしも可能ならそこで学位もとって現地の人の視点により近いところから、アフリカの抱える問題について考えられる人になろうと思いました。

ウガンダ留学は第一希望でしたが大学一年の冬に、留学先がマケレレ大学になったという知らせを受けました。マケレレ大学に着くと奇跡的に私の住む場所が確保されていました。住居の申し込みをしても事務所に忘れられてしまう場合が非常に多く、住むところがなくて困っている学生に何度も会ったので、私はラッキーだったと心から思います。私はアフリカホールに住むことになり芝生の中庭が美しいその門をくぐりました。

マケレレ大学は、かつては東アフリカの東大だったと紹介されていましたが、学生数35,000人の巨大な大学でした。その教育内容はというと、教授陣の数も揃っていないのに政府がどんどん学生の数を増やしたため巨大化したもので、あまり充実しているとは言えませんでした。

ウガンダには多くの言語が存在する国ですが、公用語は英語です。ウガンダ全土から人が集まってくる首都カンパラでは、誰がどこの民族出身だかが分からないため、みんなお互いに英語で話します。市場のおばさんやスラムに住む人々など、ローカルな人々はガンダ語を使っていました。マケレレ大学では英語以外の言語を全く聞きませんでした。授業はもちろん、学生同士の会話も英語だけで、ルームメイトのジョアンとヴィッキーがガンダ語で会話をしているのを聞いたことがありません。ヴィッキーの場合は親が幼いころから徹底して家で英語を話すようにさせていたそうです。

あるときルワンダでの問題の一つを取り上げて、それを皆で調べたあとでどのようにして自分たちのグループはその問題にアプローチしていけばいいのか、そのためにはどういうプロジェクトが必要かということを書いて提出するという宿題が出たことがあります。この授業で先生が課題をどういう風にやればいいかを説明してくれました。皆自分の意見やオリジナルな考えを書くことには慣れていません。どういう風に書けばよい点を取れるかということだけに関心があるようでした。

先生が例として、ルワンダ北部の子どもたちの小学校を普及させるために識字率を上げるためにどういうプロジェクトを立ち上げればいいかをテーマに、宿題のやり方の具体例を説明してくれました。具体的な説明がないと生徒たちはプロジェクトのプロポーザルをどう作ればいいのかわからないので先生は丁寧に細かく説明し、あとは自由に夫々のグループで調べてプロジェクト・プロポーザルを提出するように言われました。

その時に私のグループでは私とルワンダ人の女の子2~3人が集まってプロポーザルを書くことに決まりました。私はその時にHIVの問題が多かったので、マケレレの中でのHIV問題についてどう取り組んでいけばいいかのプロポーザルを書けばいいと提案したところ全員に反対されました。その理由の一つは先生の説明はルワンダ北部の教育問題だったから、これは間違いだということです。もう一つは男性の先生にHIV問題について書くのはそれだけで先生は認めてくれないのではないかということでした。HIVは男性に危機感を感じさせることになるセンシティブな問題なのです。良い点数を貰うためには先生が授業中に話したことと全く同じ内容を書いたほうがいいというのです。

教育や学問というものは、自分の力で考えて研究すれば相手がどんなに権威のある人でも対等な立場で議論できるのが本来の姿だと私は思います。これはマケレレ大学の私のとっていた学部の例に過ぎませんが、先生という立場の権力に対する服従の姿勢がとても強く、卒業したあと社会で指導的な立場になっても権力に弱い体質が続くのだと強く感じました。またこれが一番の問題だと思いました。

海外からの援助やNGOなどの活動を見ても物質とお金で判断します。援助機関も目に見える形でお金を使うことで、統計を取ったときに識字率がどれくらい上ったとかHIVの感染率が下がったとか、数字的に見て目に見える結果を出さないと支援してくれないという焦りもあるのでしょうが、こういう機関もお金という物質でアフリカと向き合っていると思います。

私は1年間学生としてウガンダで生活をしていて何が問題かというのは、人のメンタリティーだとか権威への弱さなど、誰かが来て助けてくれるだろうという態度も問題ですが、外にいる私たちもアフリカのことをあまりにも知らないということが大きな問題だと思います。安易にお金を援助することから、おかしな状況を招いていると感じました。どんなにお金をつぎ込んでも人間が変わらない限り権力に弱い体質、お金にすぐ目がくらむ社会では、そのお金が着服されてしまい、うまく物事が回らないのです。

本当にアフリカの将来のことを考えるのであれば、先ずはアフリカへ行ってよく知ることです。これは私の体験から学んだことですが、アフリカでうまくやっていくには何よりもスマイルが大切で、冗談やちょっとした会話をするなど相手との個人的な関係を作ると物事がうまくゆきます。力のある人に気に入られると不可能なことも可能になるのです。これからの予定としては自分の将来の方向を見つけるために、ホープ・ファイナンスで6ヶ月間プライベートな立場で働いてみようと思っています。1週間後にコートジボワールへ出発しますが、アフリカで今度はうまくやっていけると思います。