“カンガ” その魅力と知られざる歴史

(2019/1)

講師紹介: 織本知英子(おりもと ちえこ)

ポレポレオフィス代表。文化ファッション研究機構共同研究員。

カンガの魅力にいち早く気づき1995年より展覧会、講演会、出版、研究、ワークショップなどを通じてカンガ文化を日本に紹介する活動を続ける。2009年には東アフリカの女性約300人にカンガについての意識調査を実施。2013年に古代オリエント博物館にてカンガ展「The Art of Communication; カンガ、主張する布」を開催。編、著書に「カンガ・マジック101」「カンガに魅せられて」ほか。2016年には英語、スワヒリ語、日本語で著した「KANGA COLLECTION」をタンザニアの出版社から出版。スワヒリ語でカンガの詳細が記載された書籍としては世界で初めてとなる。

URL: http:www.polepoleoffice.jp/

織本です。こんにちは!私は1991年に「カンガ101」という本をケニアで見つけ、その後「カンガ・マジック101」という本を自費出版で作り、そのためにはカンガがあった方が良いと思い、カンガの輸入を始め、カンガの写真集なども作りました。また3年くらい前にタンザニアの出版社にこんな本を書いたのですがというメールをしたところ、面白そうだから作りましょうということで出版することになり「KANGA COLLECTION」を出版しました。今日は現地でカンガがどんな風に使われているか、また歴史的な面もお話ししようと思います。

カンガは基本的に沿岸部から発生してきました。これはモンバサのラム島ですが、当時車は1台しかなく輸送手段はロバでした。現在はすっかり近代化され街を白とブルーに統一しようと計画されて白とブルーの建物が立ち並んでいます。モンバサにはカンガを専門に売るお店がたくさんあります。これはマリア・フランシスというお店ですが、ケニアでは最近カンガでお洋服を作るのが流行っていて、この女性はカンガを買って近くの仕立屋さんで洋服に仕立ててもらうようでした。カンガ・ブブと言って、ブブとは唖のことですがメッセージの書かれていないものもたまにあります。カンガは言葉を一番重要視しますのでまず言葉を選んでから買うものを決めています。人によっては上下別の組み合わせで着る人もあります。赤ちゃんを脇に抱えるときや背負うときにも使います。言葉を読まれたくないときは言葉を上にして使うこともあります。男の人から足を見られないためにもカンガを巻くようです。キリスト教徒の女性でもイスラム教徒の多い街では頭からかぶって髪の毛を隠すと言っていました。

これはモンバサの郊外ですが、12歳くらいの女の子が首の後ろで結ぶ子供の巻き方をしています。この女性はザンジバルの方ですが、家にいるときは腰だけに巻いていますが外出するときはもう1枚上半身に巻くと言っていました。何人かでダンスをする時はお揃いのカンガを着ることもあります。カンガを柱に結んで揺かごのようにして赤ちゃんを入れ、お店番をしている人もいます。

これはダルエスサラームですが、この方はひまわりの柄が気に入って色違いも買うようです。ケニアシリングやアメリカのドル札の柄もありました。このお兄さんはテーラーさんで、通り沿いでデザインポスターを貼ってお客を待っています。本になったカタログもあります。これはカンガにアイロンをかけているところですが、古いカンガをアイロン台にしています。こういう風に何にでも使います。

これはザンジバルの風習でオマーンから伝わったものですが、三角形の台にカンガを掛けてお香を焚きしめています。壁掛けに使うこともあり、ホテルなどでも壁に飾られていることがあります。結婚式の正装では、ピンクのワンピースに同系色のカンガを肩からかけます。必ずワンピースの上に同系色のカンガをかけます。結婚式の時には一族でお揃いのカンガを使ったお洋服を作ることもあります。お葬式の時には、黒と白か紺と白のカンガを肩にかけます。男の人がカンガでシャツを作ることもあります。

カンガのデザインの特徴は、非常にビビッドな色彩でモチーフを黒で囲むことです。水玉模様がよく使われることと、カシューナッツ(コロショ)の柄はよく使われます。コロショがないカンガは完璧ではないと言われるほどです。昔は中央に大きな柄があって周りに細かい柄を散りばめるのが定番でしたが、今は全体の柄も出てきています。稀にボーダーのデザインもあります。モンバサでは競争が激しいので常に新しい柄が出てきています。

デザインは手書きで図案を描き細かい色指定をしていましたが、2000年頃からはコンピューターを使うようになっています。最近は淡い色目のものもよく見られます。お金がないとカンガを売ったり、女性の通過儀礼としてカンガを渡したり、お金の代わりに使うこともあります。

元は動物の皮で作っていましたが、時代が進むにつれて布にプリントをするようになりました。1920年代にはイギリスでプリントされており1940年代には非常に綺麗にプリントされたのもがあります。1920年代には日本でも大阪を中心にブリーチしていない布の素材が多く輸出されていました。西澤商店、伊藤忠、丸紅などの商社が主に輸出していました。プリントされた製品も和歌山の湘南工業製で非常に薄い布のものが多く見られました。デザインは4分の1サイズで描かれていましたが、現地と連絡を取って柄を訂正し、メッセージもバイヤーから指定された言葉を入れていました。出来たカンガには、このように丸紅美人と言われるシールが貼られているものもあります。1960年代には日本のカンガのシェアは90%くらいになっていました。ケニア、タンザニア独立の時にも20種類くらいのカンガが作られています。アポロが月に到着した時の柄も日本で作っていました。タンザニアの博物館には月の石が展示されていますが、その様子もカンガになっています。

カンガに対する意識調査で2009年にモンバサの300人の女性にアンケートをした結果、だいたい1人平均20組(40枚)のカンガを持っており、一番多い人は100組持っていました。またメッセージが一番重要で97%の人がメッセージで選ぶということでした。使うのは礼拝や結婚式に出席する時、あとは日常的に何にでも使います。購入の理由はメッセージが書いてあることで、贈り物にするのが60%、着用が40%になっています。カンガに対してどんなイメージを持っているかというと、文化的な象徴であり、エスニックグループを超えた東アフリカの女性としてのアイデンティーを示すものだと言う意識でした。また不平を言うのは恥であるからカンガを使って表現し尊厳を重んじるという意識もあります。意思の伝達機能は非常に重要だと言う思いが強いようです。実利性としては赤ちゃんを包む、物を包む、アフリカ女性としてのたしなみとして下肢を隠すことによく使われます。

一昨年カンガツアーというものがあって参加した時のことをお話しします。工場見学をしたのですが、各所から原綿を仕入れて混ぜ合わせ撚って糸を作るところから始めます。とても広い場所で織り機が300台くらいありました。残念ながら製造工程は撮影させてもらえませんでしたが、原綿から全ての工程を行なっていました。ショップでは自分の好きな柄を選んでテーラーさんに仕立ててもらうこともできました。仕立ててもらっている間にザンジバルに行って市場でスパイスなどを買い、そのあとガイドさんの家でピラウをご馳走になりました。こんなツアーもありますので皆様も参加してみてください。

昔のカンガを少しご紹介しますと、これは日本製のもので今のより薄い生地でメッセージがアラビア文字になっており大同マルタ染工の物です。これは西澤商店のものでソマリア向けに作ったものです。これも日本製の1968年もので布はしっかりしてプリントも良くなっています。これは2000年くらいのものでタンザニアでは政治的なものが多くなっています。マイケルのデザインもあります。お祝いにはバラの花がよく使われ「エスペシャリーフォーユー」などと書かれています。渡すときは大げさに包装するのではなく気軽に渡すことが多いようです。別れ際に自分が巻いていたものを外してプレゼントしてくれることもあります。これは「得るも失うも神様のおぼしめし」「あなたとの愛は裏切らない」などと書かれています。これはオランダ製の古いものでカゴの柄です。向こうの人はボロボロになるまで使い切るので古いものをヴィンテジとして売っていることはありません。のりが付いていて分厚いものが好きなようです。マダガスカルにもメッセージのついた布があります。ケニアではソマリの長身の人向けに大判のものもあります。近年カンガは外出する時より家の中だけで着用するようになってきていますが、毎年大量に作られて売っていますので廃れるということはないようです。

「KANGA COLLECTION」という本を出版しました。英語、日本語、スワヒリ語の対訳でカンガの歴史、デザインなどを紹介しています。タンザニアの出版社なので一般の書店にはありませんが、Amazon で買うことが出来ます。