キスマサイ絵画との対話

(2015/7)

講師紹介:高木史幸(たかぎふみゆき)
「キスマサイ、小さなギャラリー」代表

高校生の時にテレビで「パリ・ダカールラリー」を見て、砂漠とアフリカにあこがれました。大学生になりアフリカ旅行を数度経験、人々の懐の深さに魅了され、共に生活をしてみたいと思うようになりました。大学卒業後、海運会社に入り、運航オペレーション、集荷業務、予算管理など航路運営に全面的に携わりました。しかし長年の夢であった青年海外協力隊のタンザニア・バガモヨ県社会開発局に赴任出来ることになり、異文化の中で苦労しながらも次第に仲間を得て軌道に乗せ、農村のトイレ普及など生活改善に従事しました。

帰国後、またアフリカで活動したいという思いを胸にさまざまな仕事に従事しましたが、再度訪れた時に出会った「キスマサイのアート」に魅せられ、これしかないと思い「キスマサイ、小さなギャラリー」を起業しました。アフリカンフェスティバルへの参加や、神奈川県を中心に自らの展覧会開催を通して、アフリカを発信しています。2014年にアートや学芸事業についての見識を高めるべく博物館学芸員の資格を取得しました。

世の人々が求めているのは、知的好奇心の充実という「こころ」であることに気づき、人々と接しながら「教える=教わる」ことを実感し、アフリカンアートを通じた教育普及活動への思いを抱いているところです。

これはピカソの絵ですが、この前には青の時代と言われる青春時代の暗い時代があり、次にあらわれるのは恋人を得たバラ色の時代です。その後アフリカ彫刻の影響を受けてキュビズムの時代へと移りますが、アフリカに衝撃を受けたきっかけはその匂いだと言われています。そこで今日は、ここに展示してあるムニャルというタンザニアの画家のキスペインティングの作品の中に入ってこの絵の匂いや音を感じてみましょう。絵はマサイの村の生活を描いたものです。家の前に10人くらいの女性がいて何かしています。

ワークシートに沿ってやってみます。

○1 この絵の表している時間は何時ごろでしょうか。正解があるわけではなく朝なのか昼なのか何時頃か、自分が感じたとおりに答えてください。
○2 この絵の人たちは背が高いですか。何センチくらいですか。
○3 何処に座っていると思いますか。そこで何か見つけましたか?
○4 気温はどうですか?どんな風が吹いていますか。
○5 家の中に入ってみたいと思います。何と声をかけますか?中には誰がいましたか。何をしていましたか。○6絵の中からどんな音や話し声が聞こえますか。
○7 何か匂いや香がしますか。
○8 あなたが握手をしたのはどの人でしたか。手はどんな感じでしたか。どんな握手でしたか。
○9 食べ物を勧めてくれました。それは何でしたか。あなたは何と言いましたか。相手の反応はどうでしたか。これを答えた時、あなたは何を元に考えましたか。
○10 ここでは絵と自分との関係性を考えてください。○11ここはあなたにとってどんな所ですか。

私は絵を見るときに、自分との関係性を大事にしたいと思っています。他の芸術作品や小説を読むときは自然とできることが、美術作品を見るときはタイトルやキャプションに頼ってその助けを借りて理解しようとしているように思えます。その作品の背景などを思いやることは必要ですが、自分の心と体で感じることが大切だと思います。それぞれ見る方の経験や歴史によるものだと思われますが、アフリカへ行ったことのない方でも、何か懐かしいと感じることがあるようです。それは自分の子供時代の何かの経験からきていると思われます。自分の経験からくる感情を元にして作品を見ることをスタートしてもいいのではないでしょうか。

やはり皆様も自分が行った時の体験をもとに、この絵との関係性を感じ、その場所は自分にとってどんな所かを感じるようです。このようにして一度絵の中に入ってみてから改めてキャプションやタイトルを見てみるのがいいのではないでしょうか。見る人の世界が広がるような作品が、有名無名を問わずよい作品と言えるのではないかと思います。アートは傷ついた心を救ってはくれないが、その心にそっと寄り添ってくれる存在だと思います。

何人かのアフリカのアーティストに聞いてみましたが、マサイは伝統を最も守って生活している部族でアフリカ人の代表としてマサイを描くようになったということです。アフリカ人らしい人たちを描くことで、自分たちの暮らしを伝えたい、先入観を捨ててアフリカを考える機会にしてほしい、塗りつぶされた顔からも、どんな表情をしているかを想像してほしいと言っていました。絵を見てタンザニアを好きになってほしいと思います。

キスマサイ、小さなギャラリー
URL:http://kisu-masai.com/