ケニア半乾燥地域における森林保全活動

(2018/6)

講師紹介:望月彩葉(もちづき あやは)

神奈川県藤沢市出身。東京農工大学農学部卒業後、東京大学大学院へ進学。在学中に青年海外協力隊としてケニア共和国キツイ県に赴任し、森林保全活動を行う農民グループを支援。帰国後は、ケニアにおける住民参加型の森林保全に関する研究を行い、執筆論文は研究科長賞を受賞。現在は開発コンサルタントとしてアフリカの砂漠化対処事業に携わっている。

望月です、よろしくお願いいたします。今は社会人2年目ですが、アフリカの開発コンサルタント会社で主に太陽光発電と森林保全関係に関わっています。農業と環境に興味があって農学部に入りましたが、大学では国内の勉強が主体で、海外の勉強がしたいと思い協力隊でケニアへ行ってきました。その後大学院でもケニアの森林保全に関する研究を行いました。

日本の森林面積は国土の67%で、ケニアは野生の王国だと思われていますが森林面積は6.1%にすぎません。気候帯的に森林の少ないサバンナ地帯ですが、さらに温暖化や人口増加の影響を受けて森林が減少しています。家畜を飼うことによってこれから育つはずの木の芽もヤギが食べてしまう、農地の拡大などの影響も受けています。私は、ケニアのナイロビから車で3時間内陸に位置するキトゥイ県に赴任しました。カンバ族の多い地域で67.3%が貧困家庭だと言われています。カンバ族はダンスと木彫り、サイザル麻のバッグなどで有名です。食生活はウガリと言われるメイズの粉を練ったものが主食で、肉、魚、野菜を煮込んだものと一緒に食べています。水道施設を持っているのは道路沿いの限られた家庭で、ほとんどは干上がった川を掘って滲み出た水を汲んできます。

私はケニアフォレストサービスというところに配属されていました。日本の林野庁のような政府機関で、森林資源の持続可能な保全が目的です。森林面積を10%にすることを目標にしていました。まず不法伐採を取り締まり、植林の日などを利用した啓蒙活動をしていました。そのための苗畑を持っていて雨季になるとそれを販売配布し、農業現地指導もやっていました。職種は森林経営です。改良かまどの普及や養蜂の支援も含まれていました。

森林破壊の原因の一つは木質燃料を利用することで、地方ではほとんど三石かまどを使っていました。改良かまどは、ダンボール箱とペットボトルをセットして泥で固めて、固まったところで箱とボトルを抜き取るという方法で作っていました。カンバ族はレンガで家を作りますので、これにレンガを組み合わせたものを普及させることにしました。JICAの活動資金もいただけたので60戸以上の家に普及することができ、技術を10名の農民ファシリテイターに引き継いできました。みなさん正しく作って毎日使ってくれていたようです。使用効果を見ますと、チャイを作るのに30分かかっていたのが12分で出来、料理も1時間でできるようになったようです。薪の量が減ったことと常にそばにいなくて済む、朝食を簡単に用意できる、などと喜ばれました。

メリアボルケンシーという木の普及についてお話しますと、まずこの木の材質が高品質でマホガニーと同じくらいだと言われています。家具屋さんでもマホガニーが手に入らないときはメリアを使うそうです。乾燥地にも強く成長率も良く、ほかの木と比較しても一番成長率が高いようです。また水をあまり必要としないのでほかの作物と一緒に間作して育てることができます。建築材としても高値で取引されており種や苗木も倍の値段で取引されていましたが、ほとんどは国立公園などで不法に伐採されたもので正式のルートで購入されたものはありませんでした。メリアが普及しなかったのは苗木作りが難しかったためです。人工的に発芽させるには硬い殻を割って出てきた種子のさらに中の種を取り出して処理しなければなりません。現地ではヤギが食べて糞に混じっているものが自然に発芽していたようです。苗木を植えると10年で木材として収穫することができます。日本の植林に比べると早いのですが、すぐに現金収入を期待するため躊躇するようでした。まずは苗木作りから始めましたが、発芽率も悪く発芽してもうまく育つまでには時間がかかりました。最終的には3000本の苗木を育て植林することができました。ローカルレベルでは植林業にはあまり関心がありませんが、薪や自分の家を建てるための植林を奨励しています。

JICAの活動を終えて帰国し、大学院に戻りましたがその研究内容は協力隊時代の要請内容でもあるFarmers Field School (FFS)、すなわち参加型の農業技術普及手法というものです。JICAの事業でもあり、グループで植樹の方法、農業の方法を1年単位で学びます。種の取り方、害虫の見つけ方、ゲストコーチを招いて酪農の方法なども学びます。例えばメイズを蒔く時これまでのようなばら蒔きと線状に蒔くのとを実際に試して、収穫量を比較し、品種もどれが適しているかを研究します。毎週結果を測定して記録しグラフなどにして話し合います。グループの1人がホストファーマーとして農地を提供するという条件でグループを組みます。今までに343グループ、5000人以上の卒業生を出しています。ファシリテイターと言われる訓練を受けた世話役がグループを支えています。

2015年6月〜7月にFFSの現地調査に行き40グループ120人くらいの人と話し合ってきました。FFS卒業後6年経った今も活発なグループは毎週活動を続けており積極的に楽しんでいるようでした。森林以外の活動もあって、金融相互扶助活動としてメリーゴーランド(テーブルバンキング)というものを作り30グループが参加していました。お金を集めて順番に手渡すものです。植林については2年間で61本、近隣住民は40本程度でした。FFSを卒業した人の方が積極的に植林をしていました。木の生存率も卒業生の方が高い確率で管理能力も高いということがわかりました。最高350本、240本という人もいました。収入源はこれまで出稼ぎが多かったのですが、果樹や木材からの収入も見られるようになりました。果実や木材からの直接の利益よりも非金銭的な利益を認識しているように思われました。例えば防風、果実の栄養、水へのアクセス、街へのアクセス、資本、教育などです。知識から行動に移るまでの心理的な要素も加えて調査したところ、やはりFFSの卒業生の方が植林に対する意識は高く、植林をすると畑に良い影響があるという認識があるということが最終的にわかりました。あらゆる方面からのアンケートを取り、教育年数が高い方が意識は高いということもわかりました。ケニアのような乾燥地の植林はむずかしいのですが、長期的な活動で心理的な要因を高めることが必要だと思われます。

(2018/6)