ツァボ西国立公園(ケニア)における満月の夜のクロサイ調査、ほか

(2019/9)

講師紹介: 
鈴木俊昭(すずき としあき)
武蔵工業大学機械工学科卒(1973)、(株)アバコクリエイティブスタジオで録音や映像制作を学ぶ、
1995年JICAプロジェクト専門家(映像制作)としてケニアメディアカレッジで、保健省の人口教育プロジェクトに携わる。
2000年再びJICA専門家としてケニア野生生物公社(KWS)の教育部で環境教育用の映像教材作りに協力。
以降、JICAシニアボランティアとして2016年まで3回ケニアに渡り、KWSの映像教材作成に協力。
PUKUの会、中東懇話会会員。

木下史夫 (きのした ふみお)
帯広畜産大学大学院修了(野生動物管理学専攻)。
青年海外協力隊員(生態調査)としてザンビアで活動。
環境アセスメント会社、(財)自然環境研究センター、
JICA個別派遣専門家(野生生物保護・教育/KWS)としてケニア、
JICA企画調査員(ボランティア事業)としてフィジー、キリバス、サモア等で活動。
現在は(公社)青年海外協力協会 関東支部に勤務。
共訳著書に『アフリカゾウを護る闘い』(R. Leakey / V. Morrel) コモンズ社。
PUKUの会事務局長。

こんにちは!鈴木と申します、本日はおいでいただきありがとうございます。今日は、クロサイのお話をしたいと思います。僕はクロサイの専門家ではなく、映像関係を専門として2000年からケニアの国立公園でKWSという半官半民の国立公園を管理運営している公社の教育部門マルチメディア・オフィスというところで映像教材を作っていました。2016年までケニアと日本を往復しながら6〜7年エデュケーションセンターで3人のレンジャーとともに学生たちに映像を使って国立公園で今取り組んでいる問題の解説もしてきました。

 もともとケニアにはクロサイしかいませんで、シロサイは南アフリカら移されたものです。クロサイはケニア、タンザニア、ナミビア、ボツワナにしかいません。1960年にはアフリカにクロサイは10万頭いたと言われていますが、60年から95年にかけては一番密猟が激しかった頃で2408頭までに減ってしまいました。97.5%も減ったことになります。2003年には3610頭、2007年には4180頭、2017年には5055頭と徐々に回復はしています。2010年代になって、また密猟に火がついて12年から16年にかけて、かつての密猟を上回るようになってきました。昔クロサイの角は金と同じ値段でしたが、今はコカインやヘロインと同じ値段になって末端価格では信じられない値段になっているようです。

 ケニアではどうかというと、1970年代には2万頭いましたが、90年代には密猟によって350頭になりました。2017年現在ではシロサイと合わせても1256頭で、そのうちクロサイは745頭ということです。

 僕が参加したKWSが毎年やっている調査は、ロンドン動物学会のサポートとケニア政府合同で絶滅危惧種になっているサイの生態調査を20年くらい続けています。毎年乾期に調査していますが、夜水場で見張っていて水を飲みに来るクロサイの写真を撮り、耳に切り欠きを入れて個体識別をしています。闇夜だと切り欠きが判別できないので満月の夜に撮影します。

 ングリア・ライノサンクチュアリは水を引いて作った枯れない水場が3つあって、そこに一晩に1度は水を飲みに来ると想定して撮影しています。ロンドン動物学会は93年からサイやゾウなど絶滅危惧種の調査をサポートしています。ングリア・ライノサンクチュアリはツァボ国立公園の中にあり約100平方キロの面積で1986年にクロサイの保護区として周りを高さ1メートルの電柵で囲って造られました。5000ボルトの電気を流して密漁者を防いでいます。2012年には71頭のクロサイが生息していましたが、70頭をマックスとしてそれ以上増えると他の地域へ移送しています。昼間のサファリと違って暗闇のなか暗視鏡で動物を観察していると、サイの母親が子供を気遣う様子など動物の無言の声が聞こえるようです。これもまた貴重な体験でした。

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木下と申しますが、ここからは「PUKUの会」としてお話しさせていただきます。PUKUとはザンビアなど南アフリカに生息する固有のカモシカの仲間です。オスには大きな角がありハーレムを形成します。PUKUの会は、ケニアとザンビアの国立公園で生態調査を行なったJICAの青年海外協力隊0Bが集まって2005年に始めた会で、野生動物保護関連の団体と連携して活動しています。会員は22〜23人で主にケニアで野生動物の生態調査を行なっています。アフリカのレンジャーたちをJICAのお金で日本に呼んで調査報告やマネージメントの研修をする会を運営して10年くらい続いていますが、PUKUのスタッフが中心になって行なってきました。

 生態調査、環境教育関連でケニアに行った人は、1979年26人、1997年34人、2008年からシニアボランティア(40歳〜69歳)の募集も始まって全体で90人の人が従事してきました。またゾウの生態調査をするにあたって、アフリカの子供達は生きたゾウをどれくらい見ているかについてアンケートをした結果、中学生415人中見た人12%、見たことがない人88%という結果が出ました。因みに日本では33の動物園でゾウを飼育していますが、円山動物園でゾウの購入にあたって5000人にアンケートした結果生きたゾウを見たことがある人70%、ない人30%でした。

 ゾウの生息域に人間が近づいて畑や家を作ることによるトラブルが起きていますが、それを解消するにはどうすればいいかを考える時、野生動物のマネージメントは同時に人のマネージメントでもあります。プライベイトランチを観光客のために開放しているところのゾウが増えすぎて、一部ツァボに移動させるということをしました。

ツァボまで大体230kmあり、ゾウを捕まえて移動するというのは大変な仕事なのです。費用も1頭あたり50万円から100万円かかり、この時はイタリアのNGOが負担してくれました。ヘリコプターで監視しながら麻酔銃を撃って倒すのですが、ヘリと地上で連絡を取りながらゾウの動きを監視します。ゾウが倒れるとまず獣医が脈などを調べてからビニールシートに乗せて人力でコンテナの中にゾウを入れます。運ぶときは覚醒してから立たせて運びます。このときは「ボーンフリー」というNGOがスポンサーになってくれて大々的に行うことができました。群れ社会を築くゾウを1〜2頭移動するのはどうかという意見もあり、実際に自力で元の場所に戻ろうとする個体もいて、問題は山積しています。

最後に「アフリカゾウを護る闘い」リチャード・リーキー著という本がありますが、お買い上げいただくと売上は全てゾウの保護活動の費用になります。