モーリタニア砂漠の旅:写真家、エッセイスト

(2014/6)

講師紹介:加藤千津子(写真家、エッセイスト)

加藤と申します。よろしくお願いいたします。私は砂漠が好きでシリアに長くいたことがありますが、どこが好きと言われるとシリアとミャンマーと答えます。今は写真を撮りにゆく状況ではありませんが、モーリタニアの砂漠も昔は砂漠ほど安全なところはないと言われました。今はあまり安全とは言えず、夜中でも州警察がパトロールしていますし、空からも偵察をしています。私の行っている所は、大使館を事前に訪問して大使館が認めている所で、帰ってきたら状況を報告することになっています。

最初シリアから始まり、モロッコへ行って、その後モーリタニアで砂漠の奥地で医療活動をしてみないかと誘われたのがきっかけでモーリタニアにはまってしまいました。アタールという第二の都市を起点に砂漠に入ります。昼間は暑いので夕方6時頃に出発して途中で野宿をし、翌日の午前中に現地に着くというパターンで活動しています。とても貧しいのですが、夜になるとそこにあるものを何でも叩いて踊りだすなど明るく楽しい人たちなのです。昔イスラム教以前にジャーヒリアという時代がありますが、彼らの生活のパターンはまさにその時代を思わせます。現実の出来事をそのままに歌にして心を伝える世界で、音楽祭のコンテストにも参加しています。

私はNGOと同時に個人でも許可を取っていて15回滞在しています。モーリタニアは南部の農耕地帯と海岸地帯をのぞいてほとんどが牧畜を営むヌマドと言われる遊牧民です。女性は2~3時間かけて水を汲みにゆき、クスクスも小麦粉から作り、かなりの重労働をしています。現金収入は牛や山羊を売ることとアカシヤの木で炭を焼いて街へ売りに行ったりします。私はラクダのレバーやほほ肉が好きなのでそれを売ってもらっていました。料理できない場合は遊牧民のテントに入って何か食べさせてもらって少しお金を置いてゆきます。

アタールから砂漠に入るのですが、フォーサガンという所は世界遺産の街もあります。アタールからしばらく大地になっていてそこだけなぜか青いのですが、それはストロマトライトという石で青いのだということがわかりました。そこは12億年くらいの前の大地なのですが、27億年前に陸がまだ大きくないとき浅瀬で光合成をするシアノバクテリアという微生物が岩についたのです。岩に粘膜を出して張り付いたわけです。その上にまた砂がつくと呼吸が出来ないのでバクテリアが上に伸び、その繰り返しでマッシュルーム型になり1メートルくらいのものもあります。動植物が石になったものしか化石とは言いませんので、これは微生物が造った石です。最初は夢中になって採っていたのですが、気が付くと街は12億年前の台地の上にできていて、道路や壁や家の前にも散らばっていることがわかりました。更に台地の上の方へ行くと、ストロマトライトが屏風のようにそびえたっているのが見られます。

今までは砂漠は砂というイメージでしたが、もっと長い46億年の地球の歴史について考えさせられました。地球は、22億年前、7億年前、6億5千万年前に完全凍結していますが、それが融けるときに地下のマグマの爆発によって下に沈んでいた砂などがひっくり返ってできたのがモーリタニアの台地だったのです。砂漠にいて地球の歴史を考えるとき、今やっと人間の住めるいい状態になっている地球を人間は自分の手で壊そうとしているように思います。おそらく人間は地球をダメにしてしまうかもしれません。西サハラに鉱石が出たときにはフランスがすぐに鉄道を作って運び出すようになりました。

テントでの食事は油で玉ねぎを炒めてそこにアルジェリアのパスタを入れるだけです。水はアタールで大量に買い込み、飲み水以外は井戸で汲みます。途中に氷河堆積物の石がたくさんあるので有名な台地があり、現地の人たちが集めた物を並べた説明も何もない博物館と称するところがありました。風が強いとノマドのテントに行ってお茶をごちそうになることもあります。食べるのはガレットという甘くないお菓子がお決まりです。

西サハラのショップでアルジェリアのパスタやガソリンも安いので買っていましたが、なぜか急に今の大統領になってから閉鎖されてしまいました。モーリタニアは産油国なのですが地方に行くほど輸送費がかかっているので日本と同じくらい高いわけです。山を越えてエルベリヤドという町へ行きましたが、ここには旧石器時代60万年前の遺跡がたくさんあります。時々ラクダのミルクを分けてもらいますが、雨が少ないと餌になるジルジルという草が少ないのでミルクの出が悪く売ってくれません。ラクダのミルクは牛よりもさらっとしていて栄養価も高く少し塩気があります。

テントを張るときにはソドムのリンゴという木が火をつけるのにいいのでそれを探してきて、薪はアカシアの落ちた枝を拾ってきます。この後ワダンという世界遺産の街へ行きました。城壁があって昔のサハラ交易で栄えた街でした。ここには書物の遺産がたくさんあり日本の和紙で修復したものもあります。

宗教は100%イスラム教で、水の代わりにモスクの前には石が置いてあり、それで手を清めます。小学校では時間になると先生がアザーンを唱えます。モーリタニアは資源の豊かな国ですが、なぜ貧しいのかと考えてしまいます。やはり一部の有力者の所へお金は集まるのです。