東アフリカの消えるタトゥー、ヘナアート

(2019/05)

 

 

講師紹介: 金子亨(かねこ とおる)

1984年学校卒業後に東アフリカタンザニアで通算9年ボランティア等を経験。職種は美術・工芸。2014年にタンザニアを再訪し卒業生に出会う。2018年東京表参道でザンジバル女性アーティストの展覧会を企画、開催。

 

 

金子です、よろしくお願いいたします。今日は、東アフリカの消えるタトゥー、ヘナアートについてお話したいと思います。初めはテレビ局に勤務していましたが、その後ザンジバル工芸センターを作って教えていました。2014年にタンザニアを訪れた時に卒業生に再会し、手足に描くヘナのモチーフをアートとしてキャンバスに描いたヘナアートに出会い、東京でも展覧会をしようという話になりました。少し時間がかかりましたが、去年2018年に東京表参道で実現することができました。

ヘナは英語でhenna、アラビア語でヒナhinna、ミソハギ科の植物の葉を粉末にしたものです。原産は北アフリカ、南西アジアで、熱帯の乾燥地帯に自生しています。ヘナは緑色の粉末なのですが、染めるとオレンジ色になります。それを利用して、エジプトや北アフリカ、西アフリカ、東アフリカ、中近東からインドに広がったボディーアートです。タトゥーとは違って彫り物ではなく、ヘナを水で溶いて絞り器を使い細い線描きの模様を化粧として使います。幾何学模様が多く肩から手の甲にかけて描きます。主に女性が結婚する時に手と足に描きますが、男性はほとんどしません。描いてから1時間ほど乾燥させて削ると、染料が少し皮膚に入って2〜3週間は消えません。

インドの場合は、化学染料を使って黒や白の線が入っているものもあります。ザンジバルでは花や葉のデザインが多く、中近東では幾何学模様になります。濃淡をつけるために乾かす時間を変えることもあります。線描が終わると、内側を塗ることもあります。タトゥーの方が歴史は古く日本では縄文時代まで遡ります。これはエチオピアのスルマという所の女性ですが、スカリビケイションと言って染料は使わず皮膚に傷をつけることによって体に模様を入れていく宗教色の強いものです。

ザンジバルのペンバ島の話に移りますと、ヘナはエチオピア、エジプトから中近東を通ってザンジバルに定着したものと思われます。タンザニア、ケニアでも内陸部ではヘナの伝統は見られません。西暦1世紀ごろから交易によって広まったものと思われます。ザンジバルはアラビア文化の影響が強いところで、内陸部とは異なった文化が見られスルタンのパレスも残っています。中には王様の墓があります。明治時代には100人くらい日本人が住んでいて床屋さんや雑貨屋さんをやっていたと言われています。有名なのはザンジバルドアというもので、中近東から職人がやってきてザンジバルの人間にその技術を教えて作ったもので数多く見られます。最近新しいホテルも作られています。

ザンジバルにも迷路の町があって、その中にヘナのアートギャラリーがあります。去年日本で展覧会をやったメンバーが運営しています。手足に描いていたものをキャンバスにアクリル絵の具を使って描く試みを彼らは考えました。これが消えないヘナアートです。2007年ごろからイギリスやドイツなどヨーロッパでも展覧会を開いています。描き方としてはボディーと同じで、筆を使わずに絞り器の中に顔料を入れて下書きなしに一気に描いていきます。ほとんどの図柄は花や幾何学模様で、色彩は赤みが強く、筆と違って盛り上がりが見られます。普段は観光客にヘナを体験してもらっていますが、昨年11月には表参道ヒルズの裏のアパートで展覧会を開催することができました。手書きのカードや額から外したヘナアートを販売しました。今年は早くから準備をして、夏に開催したいと思っています。

日本ではティンガティンガが有名ですが、ザンジバルのヘナアートも定着すればいいなと思っています。今のザンジバルは、アラビア人やインド人の経営する新しいホテルが目立って一大観光地になっていますが、ザンジバル生まれの白人も大勢います。タンザニアというとキリマンジャロやセレンゲティが有名ですが、ザンジバルにも是非立ち寄ってください。

(2019/05)