青年海外協力隊ルワンダOV会とルワンダの教育事情

(2018/9)

講師紹介:

松山匡延(まつやま まさのぶ)
東海大学工学部航空宇宙学科卒業。JAXAで人工衛星開発の仕事に就くも1年で退社。職を転々とした後青年海外協力隊へ26歳の時に参加。ルワンダに初代の理数科教師として派遣される。帰国後、広島大学大学院国際協力研究科教育文化専攻。マラウイのJICAプロジェクト(理数科教育)へ参加。

松山です、よろしくお願いいたします。私も去年グローバルフェスタでルワンダOV会ということで参加していまして、その時にキアフリカさんとお会いしました。OVとはオールドボランティアの略で協力隊の経験者を意味していますが、この会の状況とルワンダの国際教育協力ボランティアについてお話しさせていただきます。

出身は岐阜県の関ヶ原です。大学では航空宇宙学を勉強し、その後JAXAで人工衛星を開発する仕事をしていましたが、1年で退社して青年海外協力隊の理数科教師としてルワンダに派遣される事になりました。これをきっかけに国際協力という分野で仕事をしていこうと思うようになり、JICAの本部で2年間仕事をした後、今はフリーランスでコンサルタント会社を経営しています。またルワンダOV会の会長もしています。去年日本ルワンダ協会というものができましてそこの理事をやらせていただいています。あとアイリンクという開発コンサルタント会社にも席を置いています。ちなみに15年間で8回転職しました。

協力隊に参加したきっかけは、現地の人を助けたいというよりも自分のキャリアのためにここから新しい扉が開くのではないかと思って行きました。帰ってきてから設立したルワンダOV会は帰ってきて7年後2015年ということになります。今会員数は37名です。目的はみんなで集まって何かしたいということで、日本に留学しているルワンダ人が増えてきていますので応援したいということもあります。

ルワンダでのJICAの活動は、1986年に5名の派遣から始まってジェノサイド事件での強制帰国を挟んで10年後に再開され、現在は250人の人たちが活動しています。医療レベルが低いこともありシニアボランティアはほとんど派遣されていません。行く前と現地で1〜2か月の訓練期間があります。ジェノサイド以前の隊員は現地に着くと同時に自転車を1台渡されてこれでルワンダ中を回って勉強してくるように言われ過酷な体験をしています。ジェノサイド以後の隊員はホームステイをしながら活動を始めました。2008年にはルワンダの公用語が急にフランス語から英語に変わりました。

ルワンダ0V会の活動は今のところイベントに出店しているだけです。グローバルフェスタやJICAの協力隊祭りに参加しています。アフリカビジネスラボというコミュニティがあるのですがここでも出店しています。私がアフリカから仕入れてきたものを100円から1000円で販売しています。聖徳学園の高校生がワークショップをやってくれてシュシュなど小物を作ることができます。

ルワンダ大学を卒業した2人の若者が田舎で幼稚園を設立していますが、彼らが仕事につけたのは教育を受けたからなので子供達に教育の機会を与えたいというこころざしがあって田舎に戻って活動をしています。彼らが子供の頃は一般的にお金がないのでできる子供を選んで上の学校に行かせたという経緯があります。そこで村にお返しがしたいということでファミリーヴィジョンスクールという学校を作りました。

田舎なので学費が相場の4分の1くらい、1年間の授業料が1000円くらいでやっています。それでもお金が集まらないのでお金を貸してくれないかと言われましたが、お金を貸してもそれを使いきったらまた借りることになるので学費を徴収して運営するにはどうしたら良いかを考えるべきだと思い話し合った結果、村の人たちが現金収入を得るための仕事を作ろうということになり学校を中心にした村の開発に取り組んでいます。そういう目的であればと私も投資という形で協力しています。村の人たちがネクタイを作って売り始めましたが、これはルワンダOV会の活動の一つです。まだ質が悪いので1,500円で売っていますが、もう少し質が良くなれば3,000円で売ってもいいと思っています。

私が行ったのは2006年から2007年までで、理数科教育の教師として現地の理科の実験補助として派遣されましたが、行ってみるとその必要はなく物理と数学を教えていました。アフリカの人口はルワンダに限らず今急激に増えています。公用語は英語で、フランス語、スワヒリ語、キニャルワンダ語が話せます。公用語がフランス語より英語の方が発展しやすいというジンクスがあります。ルワンダは女性の力が強く政治家の60%が女性です。人口は増えていて人口密度はアフリカで一番です。農産物はコーヒーと紅茶くらいですが、観光資源としてマウンテンゴリラのツアーがあり、今は入山料が$800になっています。

今日は、ルワンダOV会の活動として理数科教育の強化についてお話ししたいと思います。2006年に赴任した当時はルワンダで一番優秀な女子校に配属されましたので喜んで数学を教えていました。当時は先生が足りなかったのでイギリスや韓国などの先生が教えていました。ルワンダは小学校4年生から全ての科目を英語で勉強しています。生徒はノートと鉛筆しか持っていなくて、先生が教科書を黒板に写したものを生徒がまた書き写し、それで授業が終わってしまいます。残りの20分でひたすらこれを暗記して、テストに出るのもこれだけでした。これではまずいので私が始めたのは、ペンの後ろで押しても痛くないのにペン先で押すとなぜ痛いのかを考えることでした。これで面積と圧力の関係がわかり始めます。このように身近にあるもので教える、また教え方を教えるということを試みました。実験室も使いっぱなしで汚いので整理するようにし、理科クラブを作って理科を楽しく学べるようにしました。高校2年で熱力学を学びますが、これも社会見学を取り入れることにしました。これがJICAで赴任した時の試みです。

帰国後に国際協力について勉強しましたが、教育に関する国際協力は1960年に始まっているのです。当時高校進学率は20%ですので優秀な子供達が集まっており熱心に勉強していました。その後は海外へ留学して帰ってこないという状況で、残った人達は政府機関で仕事をしているようです。1990年にはユネスコ、2000年には世界銀行が資金を投入して教育を受けられる子供を増やそうという努力がなされました。Basic Education 幼稚園の2年を含めて小学校と中学校を無償化することことになり、就学率は2015年に85%を超えています。就学率は増えていますが質の問題を考えると教室も大勢の生徒を受け入れる環境にはなっていませんし、教師や教材も不十分な状態です。Learning Crisis と言われますが学校には行っていても、それだけの教育を身につけていない子供が多いわけです。基礎学力は識字力と数学力で判断されます。これをもとにして人間開発部というものが作られ国の予算の17%を教育に当てることになりました。

シンガポールのような国を目指したいのですが産業も資源もないので、人口の多いところから人的資源を利用して今後の教育方針はICT立国を目指すということです。そのためには理数科教育の強化を図って科学技術に貢献できる人材を育てることにしています。ルワンでは2006年に理数科教師として私が派遣され、2016年からは民間の教育事業が始まっています。定期的に教員研修を行うことが教育の質を高めるのに必要だという考えでプロジェクトは進められています。研修を受けた教師は学校へ帰って校内研修でその知識を広めてもらいます。カリキュラムを改訂すると同時にコンテンツを充実させ全国に広めていく方針です。パソコンがあっても中に入れるコンテンツが無いと教師は教えることが出来ませんので、今そのコンテンツを開発する作業を私がやっています。

ブートキャンプをやって、どれくらいICT(情報通信技術)化できるかの調査をさせてもらいましたが、生徒たちは5日間の長い時間でも飽きずについてきてくれ、先生もICTを使うとモチベーションが上がるようでした。結果を見ると、キャンプ前と後では飛躍的に数学の概念が出来たと思います。平均して80%まで成績が上がりました。この結果をルワンダの教育庁に提示して、3年間でコンテンツを開発するプロジェクトをやることになりました。これが私の開発コンサルタントとしての仕事の実態です。ルワンダは周りの国に比べて一番安全な国で、日本の起業家も大勢活躍しています。

(2018/9)