青年海外協力隊 マダガスカルでの活動報告

(2017/3)

講師紹介:原田実乃里(はらだ みのり)
東京都の動物園でアルバイトを始め、大学卒業後職員として飼育係になり、合わせて17年間勤務する。20代後半より日本の自然環境を学び仲間と自然観察会を10年間行う。2012年より青年海外協力隊で唯一の動物関連募集があったマダガスカルの国営動植物園へ配属。要請内容は園内の環境教育の充実であったが、要請外での活動を開拓するなど幅広く活動。帰国以後は、マダガスカル雑貨のネットショップにより、外国人との接点のない現地人の支援を行いながら、野生動物と環境講座を開く。

こんにちは!原田と申します。今日はマダガスカルのお話ということでお招きいただきました。2012年にマダガスカルの国営動植物園へ派遣され、専門は環境教育職ということで行きました。日本では動物園の飼育係をやる傍らボランティアで自然観察会などやっており、その経験をもとにマダガスカルへ行きました。マダガスカル国立ジンバサダ動植物園は日本とはシステムが全く異なっていて国内にある唯一の動物園であり、唯一の植物園、唯一の博物館、さらに図書館を兼ね備えていました。今日お話しするのは、そこでの活動ではなくKI-AFRIKAさんは小学校への支援をされているということですので、その関連のお話をしたいと思います。

マダガスカル共和国は赤道に近いので暑いかと思いましたが首都アンタナナリポの気温は大体東京と同じくらいです。冬は寒く夏は暑い、雪は降らないけどコートがないと寒いと言った感じです。小さい島と思っていましたが日本の1.6倍の広さがあります。小学校の入学率は70%で、かなり高い方です。国民総生産は185位、ケニア145位、日本26位となっています。主要な農畜産物は米、コーヒー、バニラ、砂糖、クローブ、牛肉などです。漁業では、エビ、マグロなどが挙げられます。稲作は水稲でしたが最近は水資源の不足から陸稲も入ってきています。以前中国人が入植して土地を買い占め、紫檀、黒檀を採り尽くしたことが原因で、今では森林率が20%になってしまいました。昔は緑の島と言われていたものが今は赤い島と言われているようです。食べ物は、鶏肉、豚肉、牛肉と野菜も豊富にあり、食に困ることはありません。

私が現地に行って考えさせられたことは、援助と支援の違いは何かということです。援助とは代わりにしてあげること、支援とは相手が自分でできるように手助けをすることのように思われます。私がやりたいのは、最終的には自分たちでやれるように支援をすることです。それには絶対条件として本人が変化を望んでおりその意欲があることだと思います。首都で感じたことは、各国の支援が入っているため支援慣れしていて自分たちでなんとかしようという意欲をなくしているということでした。援助がなくなるのを恐れて変えようとしないという悪循環に陥っているわけです。私は2年間しかいないという中でその役割を考え裏方に徹することにし、相手がやりたいと思うことを支援して見守ることにしました。

今日の話は、私立学校へ環境授業をやりに行った時のことになります。その時に関わってくださったのが「カワセミクラブ」です。最初にやったことは、知り合いになった英語教師に頼んで私立小学校長を紹介してもらいました。アポだけとってもらい校長先生に会いに行き、私は環境教育で来ており無料でいいので環境授業をやらせて欲しいとお願いしました。学校側としては、言葉もできない外国人を受け入れることに抵抗があり積極的ではありませんでした。しかしどんなことをやるかをあれこれ話すうちに、私が日本人であることも手伝って、とりあえずやってみるようにとの許可をもらえた学校が3校ありました。

意識の高い先生は環境授業の必要性を感じていましたが、教えられる教師がいないし、どう教えていいか分からないということでした。学年は2−3年生で月に一度やらせていただくことになりました。授業を始めるにあたって、WWF(世界自然保護基金)母体の現地で活動する団体である「カワセミクラブ」に行きました。メンバーは首都の大学で環境学科を学んでいる18歳から25歳の学生でしたので、彼らの活動の場を広げる意味で手伝ってもらうことにしました。エリート学生なのですがこれまでは失敗を恐れるため、あまり活動はしていませんでした。自分の知識を広める楽しさも知ってもらいたいと思い、障害者ともかかわらせること、継続して活動してもらうことを目標にしました。

いきなり「カワセミクラブ」の学生を連れて行くと学校側は嫌がるわけですが、エリート学生なのでかえって喜んでくれるし言葉の問題も解決すると考えました。一回に3人の学生を連れて行くことにしました。そのうちの一人は引き継ぎのために前回経験のある人に来てもらうことにしました。まず始まりは挨拶からということに決めました。最初に用意したのはカードゲームで動物のカードと生息地のカードの絵合わせをします。三つのグループに分けてカワセミクラブのメンバーが一人つくようにしました。教室内か外に場所があれば屋外でやりました。私立の学校は海外の援助でできていますので、フランス系の学校は校庭が狭くイギリス系の学校は広くなっていました。

毎回授業の内容は変えるようにしていました。絵を描かせることが多く、例えば鶏の絵を描いてもらいその絵を中心に黒板を使って鶏の話をします。カワセミクラブの学生には、私の作った資料を見ながら写真も使って説明してもらいました。最初は緊張していましたが、回を重ねるに連れて生徒の顔を見ながらうまく話せるようになり、子供の年齢やレベルに応じてうまく対応できるようになりました。最初にカワセミクラブのメンバーに授業の内容を説明しておき、臨機応変に生徒の意見を聞いて進めてもらうようにしました。解説は授業の最後にします。環境教育の場合は必ずしも正しい答えがないこともあり、それも勉強のうちです。

こういう活動をしているうちに、中学生もやってほしいという要望があり、やってみることになりました。中学生は考えてもらうこととグループ活動が中心になりました。基本的には教室内で前後4人くらいのグループに分けました。先生となる学生が子供たちの野次などで行き詰まった時は少しサポートしましたが、大丈夫だと思った時は彼らに任せて私は退出していました。その時間の担当だった学校の先生は、興味がある人は聞いていますが出て行ってしまう人もいました。長く続けて行くうちに興味のある先生が授業に参加してくるようにもなりました。

話は変わりますが、マダガスカルは18の部族からなる移民の国です。東南アジアからはアジアの人間が入り、アフリカからはアフリカの民族が入り、アラブからはアラブ人が入ってきました。そのため顔がそれぞれ違い結婚問題になると反対されるなど部族間の差別はあるようでした。

もう一か所、JICAが支援している聴覚障害者の学校を紹介してもらい10人の学生を連れて行ったことがあります。カワセミクラブの学生たちは恵まれた家庭に育ったエリート学生なので、違った世界の子供たちを知ってもらいたいと思ったからです。はじめは緊張していましたが学校側で手話のできる先生に入ってもらい、いつも通り授業をやることができました。質問に対して○バツで答えてもらうなどの工夫はしましたが、耳が聞こえないだけで同じなのだということをわかってほしいと思いました。

最後になりますが小学生たちに伝えたかったのは、挨拶をする、友達と協力する、自分で考えることを身につける、ということでした。マダガスカルはなんでも話し合いで決めると聞かされて、なんていい国なのだろうと思いましたが、それは単純に喜べるものではなく子供のうちから家庭の格差が身についていて、強い立場人間の意見で決まっていくのです。そこで答えが一つでない問題を作りいろんな場合があるということを分かってもらうようにしました。この活動は最終的に色々な反響があって多くの学校からやってほしいという要望がありました。任期が終わるに当たって、余暇でやっていた活動ですのでJICAに引き継ぐわけにもいかず、WWFのカワセミクラブにお願いするようにという道筋だけはつけてきました。