CanDo のケニアにおける活動

(2012/7)

講師紹介: 永岡宏昌 (CanDo:アフリカ地域開発市民の会代表)

アフリカ地域開発市民の会(CanDo)は1998年1月1日に設立。その年から始めたケニアでの活動は14年目に入りました。「地域に住む人たち自身が考え、その行動によって、暮らしがより豊かに変わること」を目指しました。最初に開始したのは教育の分野ですが、ケニア東部州ムインギ県で地域との関係を築きつつ暮らしの基盤となる保健と環境の分野を探り、2004年からはエイズ関連の保健と教育活動の比重が大きくなっています。

東アフリカは決して閉じられた世界ではなく、アラブ社会との交易で栄えていましたが、ギリスの植民地になったことで大きく変わりました。イギリスはウガンダを開発するためにインドから契約労働者を連れてきてモンバサからキスムまで鉄道を建設し5年後に完成しました。この間にケニア山のふもとで標高が高く、気候が温暖で、降水量も多く農業に適した地域を「ホワイトハイランド」と称してヨーロッパからの入植者に貸し付けました。これで鉄道の建設費を返済したのです。

もともとキクユ人が農耕地としていた肥沃な土地は、白人の農場として開拓され、植民地は部族の線を引き、乾燥地や半乾燥地に居住区としてアフリカ人を住まわせました。部族語を使わせ、移動を制限して集団化を抑えました。キクユは最大民族で、これまでは年取った男が偉く集団合議制で社会が成り立っていましたが、植民地経営上税を徴収するには不都合なため、新たにチーフを任命して現金で人頭税をおさめさせたのです。このことから部族間の争いが始まりました。これはアフリカの他の国にも言えることです。ケニアッタ政権以降はキクユの利益を集中させるなど政治的暴力が目立ち民族間の争いが絶えなくなりました。

こういう状況の中では地域社会を守ることを応援するしかありません。公的サービス、保健、教育、食糧問題、エイズなどを中心に活動を始めました。生活にかかわる教育は重要で、母親が知識を持っているかどうかで子供の生存率が非常に変わってきます。しかし援助が入ることで偏った利益を求めることになりかねないので、CanDooでは勉強会で食料を配るということは一切しないことにしました。知識が利益だということを知ってもらいたかったからです。援助する側は長期的ヴィジョンを持つことが重要です。

CanDoでは教科書配布に続く活動として、住民参加による教室の建設を始めました。2003年から初等教育の無償化が始まり、ムインギ県の生徒数が8602人から13038人へと大幅に増えましたが、それに伴い教室の不足、教員の不足が大きな問題になってきました。地域で土地を確保し恒久的な教室を建設すれば、小学校として認可され校長を派遣してくれますし、建設を続けると教室の増加に従って教員が派遣されます。

教室を建設するときは、まず住民合意の上で作業を始めます。土地を確保し資材を集めるのに半年から1年かかります。これまで土地は地域の有力者が提供してくれましたが、最近は買うことが多くなりました。元々はただで手に入れた土地であっても世代が変わるごとに所有者としての意識が強くなって土地の値段が上がってゆきます。建設作業は保護者会を重要視して、何度も集会を開き合意したうえで、レンガ造り、木枠組み、ジャリ作りなどの作業を始めます。セメントなどの資材管理も出入りをノートにつけて校長と職人のサインを入れて完璧に管理されました。

CanDoでは土台作りは全部しますが、教室は一つだけしか作りません。あとは住民だけで作ってもらいます。一つ教室を作った経験によって、次の教室作りもうまくできるようになるのです。今力を入れているのは、マネージメントを理解することで、参加することの意義、時間管理、畑仕事との時間の割り振りを考えて時間通りに来ることも重要なポイントです。最後にインタビューをしたところ、こういう管理の大切さがわかったと言っていました。

後は保健教育とエイズ関連活動のお話をします。エイズはHIVが免疫細胞に侵入し、免疫細胞がウィルスの生産工場になり体内で増殖するものです。ケニアでの感染率は10%弱で、女性の方が感染しやすいようです。助産婦の感染や家庭内で歯ブラシを共有することによる感染が増えています。また結婚するときに婚資を請求する習慣があり、女の子が妊娠すると請求しますが、結婚に至るケースは少なくシングルマザーになってしまいます。

教科書には書かれていますが、教員にエイズの智識がないため、エイズになったらおしまいだ、エイズはモンズターだといった歌を歌わせるなど、これまでは脅し教育に終わっていました。そこでまず教員の研修から始めて、次に子供が学んだことを地域の人たちに伝える発表会も開催しました。何かのテーマを詩や劇にして演じることがケニアの教育ではよくおこなわれますが、エイズの問題もこのようにして発表されました。陽性者ケアや、差別、偏見の克服を意図する劇も演じられるようになってきました。この後保護者と教員でどうしたらエイズから子供たちを守れるかを話し合いました。

ケニアの人々が持っている豊かさとは何かを考えたとき、それは「仲間内で協力する力」だと思いました。家族、親せき、近隣に暮らす人々が協力し合って生活することが豊かさを作っているのです。日本にもアフリカの人たちとつながる「仲間」が一人でも多くできることを期待しています。